本気で編むって何を編むのかなぁ…
文章?編み物のこと?
などと全く前知識のないまま、荻上監督作品という理由だけで観たこの映画―
今までの荻上作品とはある意味、一線を画す作品に仕上がっています。
『彼らが本気で編むときは、』
荻上直子監督作品 2017年 日本
文部科学省選定作品。LGBT先進自治体であり、日本国内で初めて「パートナーシップ証明書」を導入した東京都渋谷区、および渋谷区教育委員会が初の推奨作品に選定。
第67回ベルリン国際映画祭・パノラマ部門正式出品、ジェネレーション部門特別上映作品。ベルリン国際映画祭で日本映画初のテディ審査員特別賞、観客賞(2nd place)をダブル受賞。(wikipediaより)
- あらすじ
母親が育児放棄、置き去りにされた11歳の少女トモが、叔父マキオ、マキオと同棲している美しく心優しいトランスジェンダーの女性リンコとの新しい〝家族”と触れ合い、自分の居場所と本当の幸せを見つけ出していく物語。
- 家庭のぬくもり
カップ味噌汁とコンビニのおにぎりで、ひとり食事をしていたトモ。食卓を彩る美味しい手料理、生まれて初めてのキャラ弁、髪を可愛く結んでくれること、編み物を教えてくれること…母が与えてくれなかった家庭のぬくもりを初めて知り、自分に愛情を注いでくれるリンコに少しづつ心を開き、絆が生まれていく。
- 編み物を編むこと
世間の無理解や偏見から「普通じゃない」と言われてしまうリンコ。でも、そんな悔しいことや悲しいことがあっても、彼女は編み物を編むことで、ネガティブな感情を全部「チャラ」にしていく。
女性部屋への入院というあたりまえのことが、戸籍上は男性ということで拒否され、男性部屋へ入れられてしまうリンコ。その悔しさ、切なさをトモが編み物で吐き出すシーンがとても印象に残っている。
- 108個の煩悩
リンコは何か筒状の物体を次々とひたすら編み続けている。実はそれは、性転換手術で失った自身の男性器の身代わりである。その物体が108個出来上がった時には一斉に燃やして供養をし、自身のある願いを実行に移そうと思っている。
感想
リンコの母親の子供時代のリンコへの向き合い方が素晴らしく、この作品のテーマは「母親が自分の子を理解し十分な愛情を注ぐこと」で、その子もまた我が子に愛情を注げるようになる(リンコのトモへの愛情の注ぎ方)ということ。
それと同時に、トモの母ヒロミ、ヒロミの母(リンコが老人施設で介護をしている女性)の「母娘三代に渡る負の連鎖」と呼ぶべき、厳しい現実も本作では描かれています。
その関係性は完全に崩壊しているかのように見え、実は心が繋がっていることが分かってくるシーンもあり、ちょっと救われます。
本編中、リンコたち3人が仲良く並んで編み物をしているシーンは、何だかシュールでとても可愛らしいの。
リンコの母親がリンコにプレゼントした、毛糸で編んだ中に綿を入れたオッパイ ^ ^
この作品のエッセンスにもなっていますが、これまたとっても可愛く…
編み物好きな方にも、是非観ていただきたい作品です。
荻上直子監督は『かもめホテル』『めがね』『レンタネコ』など、どの作品も独特の世界観と演出が魅力の監督。
また1つ荻上監督の好きな作品が増えました。
アマゾンプライムで観ました ^ ^